【2022年度:第5戦】第64回東日本実業団陸上競技選手権大会――暴風下での勝利と、「走りのズレ」という発見。日本選手権へ向けた大切な検証

2022年度
2022年度東邦銀行
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大会概要

大会名:第64回東日本実業団陸上競技選手権大会
開催日:2022年5月14日–15日
会 場:山形県総合運動公園陸上競技場(山形県天童市)

レース結果

女子200m

記 録:24秒33(−1.8)
順 位:1位

女子400m

記 録:55秒12
順 位:1位

( 出典:東邦銀行陸上競技部 公式サイト「大会日程・結果」
( 出典:東日本実業団陸上競技「第64回東日本実業団陸上競技選手権大会」リザルト

松本奈菜子のコメント

今大会は暴風の中での試合でしたが、自分の苦手が明確になった試合となりました。400mでは300mまでは自分のしたいレース構成で走れましたが、ラスト100mで上体が反ってしまい、良い感覚で最後まで走り切ることが出来ませんでした。また、200mではスタートから重心を移動することができなかったので、うまくスピードに乗り切れませんでした。どちらの種目でも、走り方が若干ズレてきている感覚があるので、日本選手権までに走りの感覚をよくしていきたいです。

( 出典:東邦銀行陸上競技部 公式サイト「大会日程・結果」選手コメント

考察①暴風という条件下での二冠――競争力の確かさ

今大会は、暴風という極めて難しい気象条件のもとで開催された。追い風と向かい風が刻々と変わる環境は、すべての選手にとって等しく厳しい状況であった。その中で松本は女子200mと女子400mの二冠を達成した。

記録の数字こそ抑制された水準に留まっているが、この条件下で二種目を制したという事実は、東日本地区のトップレベルでの確かな競争力を示している。条件が悪ければ悪いほど、その中でレースを崩さず集中力を保てるかどうかが問われる。松本がこの二冠を達成できたことは、どのような状況でも走り切る力が育まれてきていることの表れでもあるのではないだろうか。

考察②400m──「300mまでは自分のしたいレース構成」という手応え

400mの結果について、松本は「300mまでは自分のしたいレース構成で走れた」と語っている。ペース配分と走りの組み立てが、暴風という難しい条件の中でも戦略通りに遂行できていたことを示す言葉として、深く伝わってくる。

しかしラスト100mで「上体が反ってしまい、良い感覚で最後まで走り切ることができなかった」という。上体が反るという現象は、疲労が積み重なる局面で体幹の支持力が落ちることで生じやすく、推進力の効率に影響を及ぼすと考えられている。これは筋力そのものの問題というよりも、疲労下でのフォーム制御という課題として捉えることができるのではないかと思われる。

「300mまでの手応え」という確かなものを持ちながら、「ラスト100mの課題」も同時に見えた一戦として、このレースは大切に記録されるべきものである。

考察③200m──スタート局面の重心移動という課題

200mについては、「スタートから重心を移動することができなかったので、うまくスピードに乗り切れなかった」という言葉が残っている。

重心移動の遅れは、スタート直後の初速の立ち上がりに影響しやすく、その後のリズムにも波及することがある。特に向かい風の条件下では、こうしたスタート局面のわずかなズレが、より顕在化しやすいとも考えられる。それでも優勝を果たしたことは、スタート局面の課題をそれ以降の走りで補う力があることも示している。

考察④両種目に共通する「走りのズレ」という感覚の言語化

松本の今大会のコメントで特に注目されるのは、「どちらの種目でも、走り方が若干ズレてきている感覚がある」という言葉である。

400mのラスト100mの姿勢崩れ、200mのスタートでの重心移動の遅れ。これらは表面上は異なる課題のように見えるが、松本自身は両種目を通じて「走り全体の感覚的なズレ」として捉えている。特定の局面の技術的な問題としてではなく、走り全体に通じる感覚の変化として認識できること。これは自己の走りへの深い自己観察の表れではないかと感じられる。

自分の走りの理想像と現実の感覚との差異を正確に感じ取り、言葉として表現できていること自体が、松本の繊細な感受性を示している。

考察⑤「日本選手権までに走りの感覚をよくしていきたい」――次への視線

「日本選手権までに走りの感覚をよくしていきたい」という言葉には、今大会を単なるレース結果として終わらせず、次の目標へ向けた修正の機会として捉えている姿勢が表れている。

二冠という結果を手にしながらも、「ズレ」を認識し、それを次の大会までに整えようとする意志。この姿勢は、高校時代から一貫してきた「勝っても満足せず、内側の基準で自己を測る」という松本の競技への向き合い方と深くつながっているのではないかと思われる。

今大会は「勝利」と「課題の明確化」が同時に得られたという意味で、日本選手権前の大切な検証の場として、このアーカイブに記録されるべき一戦だと思われる。

解説――東日本実業団陸上競技選手権大会について

東日本実業団陸上競技選手権大会は、東日本実業団陸上競技連盟が主催する、東日本地区の実業団選手が参加する陸上競技選手権大会である。全日本実業団対抗陸上競技選手権大会の予選会も兼ねている。

会場は年度によって異なり、東日本各地の陸上競技場が使用されている。 全日本実業団選手権への出場権がかかる予選会としての性格を持ちながら、各選手がシーズン前半のコンディションを確認し、夏以降の主要大会へ向けた調整を図る場としても機能している。

東日本を代表する実業団選手が一堂に会するこの舞台は、東邦銀行陸上競技部にとっても毎年重要な位置を占める大会のひとつとなっている。

解説――山形県総合運動公園陸上競技場について

山形県総合運動公園陸上競技場は、山形県天童市の山形県総合運動公園内にある陸上競技場兼球技場であり、日本陸上競技連盟第1種公認 である。

施設は山形県が所有し、株式会社モンテディオ山形が指定管理者として運営管理を行っている。1991年6月1日に陸上競技場・サブグラウンド・総合体育館等が供用開始され、1992年(平成4年)の第47回国民体育大会「べにばな国体」にあわせて整備された施設である。

総面積は約56.1haに及ぶ広大な敷地を持ち、主要施設として陸上競技場をはじめ、総合体育館、テニスコート、レクリエーションプール、野球場、屋内多目的コートなどが整備されており、県民のスポーツ活動・レクリエーション活動の場として幅広く活用されている。

現在の愛称「NDソフトスタジアム山形」(略称:NDスタ)は、山形県南陽市に本社を置くエヌ・デーソフトウェアが命名権を取得し、2007年4月1日より使用されているものである。Jリーグ・モンテディオ山形のホームスタジアムとしても知られており、陸上競技大会や高校サッカーの決勝大会などにも使用されている。

※本ブログは、公式記録および関係団体の公式発表、陸上競技専門メディアの公開記事、ならびに信頼性の高い報道・Web記事を参考資料として作成しています。記事中の見解および考察は運動生理学・スポーツ科学等の知見に基づく筆者の見解であり、松本奈菜子選手本人、東邦銀行陸上競技部、および関係諸団体の見解や立場を示すものではありません。
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