ベルギー、そしてウズベキスタンへ――東京世界選手権代表入りへの渾身の挑戦

2025年度
2025年度東邦銀行7年目
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夏の強化テーマ――走りの芯を再構築する期間

世界選手権の代表入りを現実的な射程に捉え、松本奈菜子は2025年の夏、走ることに一切の余白を残さなかった。そのテーマは明確だった。

量と質の追求。スピードの再構築。400mランナーとしての「走りの芯」を根本から磨き直すこと。

松本は夏合宿と海外遠征により、積み重ねたトレーニングの量と質を実戦の中で確かめ、400mランナーとしての走りの芯を、自らの手で磨き直していった。

初の単独ベルギー遠征――競技と生活の完全自己完結

8月、松本は単身でベルギーへ渡る。
それは競技遠征であると同時に、完全に自己完結した環境に身を置く初めての挑戦でもあった。

練習やレースだけではない。
食事、移動、調整、休養──生活のすべてを自分で判断し、決定し、遂行する日々。

言語、文化、習慣。
日本では意識することすらなかった壁が、当たり前のように立ちはだかる。

日常のあらゆる場面で、自分の思考と判断が問われる。「なんとなく」が通用しない環境の中で、松本は、準備する力と自分で決めて動く自律性の大切さを改めて学んでいった。

8月10日、松本はベルギーの地でWAコンチネンタルツアー大会の女子400mに出場。53秒43を記録した。世界選手権の代表選考を視野に入れたこのレースは、自身のコンディションと走りの現在地を確かめるための、重要な一戦であった。

「準備する力」が生んだ逞しさ

松本は2025年9月1日のブログに、次のように綴っている。

当たり前ではありますが、時間や下調べなど、物事を進めるための準備がどれほど大切か学びました。日本では適当に過ごしていても何とかなりますが、海外では切符1枚買うにも、何のためか、どんな切符かを調べる必要があります。その準備こそが、気持ちよく生活するために必要なことだったのだと改めて感じました。食べ物や過ごし方も自分で選び、海外の雰囲気を味わいながらコンディションを作る大変さと楽しさがありました。
その楽しさが、自分の逞しさにつながるのだと実感できました。

(出典:東邦銀行陸上競技部 公式サイト「選手ブログ」

海外遠征で得たものは、タイムや技術だけではない。
物事を進めるための準備の大切さ、そして何もかもを自分で選び、進めていく大変さと楽しさを、松本は自らの経験として深く刻み込んでいった。

ウズベキスタン遠征――52秒70が示した本来の走り

ベルギーのレースに続き、8月16日に松本は、ウズベキスタン・タシケントで開催された「Silk Road to Tokyo WAコンチネンタルツアーブロンズ」の女子400mに出場した。ワールドアスレティックス公認のこの国際大会は、東京世界陸上の代表選考を見据えた上での、文字通り渾身の一戦であった。

力強いスタートからスピードに乗り、バックストレートで早くもリードを奪うと、後半さらにペースを上げてリズミカルな走りをキープし、後続に2秒近い差をつけてゴール。記録は52秒70で、タイムレース総合でも優勝を果たした。ベルギーでのレースの53秒43から、わずか1週間で0秒74タイムを短し、本来の調子を取り戻すパフォーマンスを見せた。

悔しさを燃料に、次のフェーズへ

日本選手権で世界選手権の代表入りを決められなかった悔しさは、確かに残った。
しかし松本は、立ち止まらなかった。

敗北は松本を後退させるものではなく、次の行動を加速させる燃料となっている。

「この9月が充実した月になるよう、ここからまた頑張ります!」

松本はこのような言葉で上記のブログを締めている。この言葉は決意の宣言ではない。
すでに行動で示してきた者が、次のフェーズへ入るための静かな合図だ。

一段上のギアへ――世界を見据えた夏の確かな手応え

積み重ねた海外遠征。
海外で高めた生活と競技の自律性。
自分の手で環境を整え、走りを成立させてきた確かな実感。

この夏の経験は松本にとって、「走る力」と「日常を自らの手で組み立てる力」が交差した、深く意味ある時間となった。

世界の舞台へ向けて、松本奈菜子は静かに、しかし確実にギアを一段上げている。

解説――ベルギーについて

ベルギーは西ヨーロッパに位置し、首都はブリュッセル。フランス語、オランダ語、ドイツ語の3言語が公用語とされる多言語国家である。面積は約3万平方キロメートルで日本の九州とほぼ同規模だが、人口密度は高く、EUやNATOの本部が置かれる国際都市としても知られる。スポーツ面ではサッカーが圧倒的な人気を誇るほか、自転車競技やモータースポーツも盛んである。

陸上競技ファンにとって、ベルギー・ブリュッセルはひとつの特別な地名でもある。ダイヤモンドリーグは陸上競技世界最高峰のシリーズ戦であり、ブリュッセルはその主要開催地のひとつとして毎年名を連ねる。ファイナル前の重要な一戦として、世界トップアスリートが集まる舞台となっている。

解説――ウズベキスタンについて

ウズベキスタン共和国は、中央アジアに位置する内陸国である。首都はタシケント(タシュケント)。ウズベク語を国家語とし、ロシア語も広く使用されている多民族国家で、古来シルクロードの要衝として栄えたサマルカンドやブハラなど、歴史的な都市を数多く擁する。
日本との時差は4時間(日本が進んでいる)であり、ベルギーと比べると時差の面では日本に近い条件で遠征できる環境にある。

スポーツ面では、サッカーと格闘技が特に盛んであり、ボクシング、レスリング、柔道、テコンドーなどでオリンピックや世界選手権における強豪国として知られている。
また、アジアの中央付近に位置するという地理的条件と、大会会場などのインフラが比較的整っていることから、アジアでのスポーツ関係の国際大会の開催地として選ばれることがある。

松本が8月に出場した「Silk Road to Tokyo WA Continental Tour BRONZE」はWorld Athleticsが主催するコンチネンタルツアーのブロンズカテゴリーに位置づけられる公式国際大会であり、アジア各国のトップアスリートが集う格式ある舞台である。「シルクロード」の名を冠したこの大会は、ウズベキスタンの歴史的背景とも重なり、同国が陸上競技の国際舞台として確かな存在感を持ちつつあることを示している。松本にとって、この大会での経験は世界選手権代表選考を視野に入れた重要な実戦の機会となったと考えられる。

※本ブログは、公式記録および関係団体の公式発表、陸上競技専門メディアの公開記事、ならびに信頼性の高い報道・Web記事を参考資料として作成しています。記事中の見解および考察は運動生理学・スポーツ科学等の知見に基づく筆者の見解であり、松本奈菜子選手本人、東邦銀行陸上競技部、および関係諸団体の見解や立場を示すものではありません。
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