大会情報
大会名:第59回実業団・学生対抗陸上競技大会
開催日:2019年7月27日
会 場:Shonan BMWスタジアム平塚(神奈川県平塚市)
レース結果
種 目:女子400m
記 録:54秒31
順 位:1位
備 考:リアクションタイム 0.199
( 出典:東邦銀行陸上競技部 公式サイト 「大会日程・結果」 )
( 出典:日本陸上競技連盟 公式サイト「第59回実業団・学生対抗陸上競技大会」大会情報 )
( 出典:日本陸上競技連盟 公式サイト「「第59回実業団・学生対抗陸上競技大会」リザルト )
松本奈菜子のコメント
あまりちゃんと出しきれず、ふわぁ〜っと終わってしまった400だったので、ペース配分の課題として前半でスピードに乗ったところで走り続けることができたらよかったと思いました。
考察①「勝ったのに満足できない」――一貫してきた評価軸】
54秒31での優勝という結果に対し、松本奈菜子は「あまりちゃんと出しきれず」と語っている。しかしこの感覚は、この大会に限ったことではない。高校時代から、優勝してもタイムに満足できなければ「悔しい」と言い続けてきた。順位よりもタイム、外的な評価よりも自分の内側にある基準――この姿勢は、松本が競技者として歩み始めた頃から一貫している。
東邦銀行に入り、実業団の舞台で優勝を果たしてもなお、その姿勢は変わっていない。「自分の持っている力をどれだけ発揮できたか」という問いを自らに向け続ける松本の在り方が、このコメントにも表れているのではないだろうか。
勝利しながらも「まだ出せるものがあった」という感覚を持てること。それ自体が、次の挑戦へ向かう力の源となっていくのではないかと思われる。
考察②「ふわぁ〜っと終わった」という感覚の精緻さ
「ふわぁ〜っと終わってしまった」という言葉は、一見すると曖昧な表現のように見えるが、この身体感覚の描写には重要な情報が含まれているように思われる。
疲れたから失速したのでも、意図的に抑えたのでもなく、気づけばレースが終わっていたというこの感覚は、前半でスピードに乗りながらも、中盤以降でその流れが自然に失われていく状態を表しているのではないかと考えられる。全力を出し切った感覚もなく、かといって余裕があったわけでもない、という宙に浮いたような感覚として伝わってくる。
重要なのは、松本がこの微妙な感覚の変化を明確に「問題」として言語化できている点ではないだろうか。自己の走りを高い解像度で感じ取り、その状態を言葉にできること。こうした自己の認知や動作を把握・言語化する力――メタ認知(metacognition)と呼ばれるこの能力――が、継続的な技能向上と深く関わっていることは広く知られている。
考察③「前半でスピードに乗ったところで走り続けることができたら」という課題
松本が指摘した課題は、トップスピードに達する能力は備わっている一方で、その速度を中盤以降も保ち続ける走りがまだ完全には実現できていないという点に集約されている。
400mという種目において、前半で作った流れを後半まで保ち続けることは、この種目の本質的な難しさのひとつである。スピードに乗った瞬間の感覚と、それを保ち続ける感覚は、似ているようで質的に異なる。この区別が身体の中で整理されていくことが、53秒台前半への道筋のひとつになるのではないかと考えられる。
これまでのレースで語られてきた課題の流れを振り返ると、出雲陸上でのスタート、静岡国際でのバックストレート、木南記念での300m地点での切り替え、そして本大会での「スピード維持」という課題へと、松本が向き合う焦点が変化しながら深まってきていることが見えてくる。一戦ごとに課題を言語化し、次へとつなげていくこの積み重ねが、競技者としての松本の歩みを着実に前へ進めている。
考察④「出し切れなかった」という前向きな不満足
「出し切れなかった」という感覚は、身体的にはまだ余力が残っていた可能性を示している。これは、自分の潜在的な力と実際のパフォーマンスとのギャップを正確に感じ取っているということでもある。
「あの区間でこうすればよかった」という具体性を持った不満足は、漠然とした悔しさとは異なり、次のレースへ向けた明確な方向性をともなっている。具体的な改善点が見えているからこそ、その不満足は前向きな力として機能していくのではないだろうか。
松本のコメントに流れる「ふわぁ〜っと終わってしまった」という惜しさと、「走り続けることができたら」という前向きな視線。この二つが共存していることが、このレースの持つ意味であるのではないかと思われる。勝利への満足ではなく、パフォーマンスの質への誠実な向き合い方。それが、社会人初年度における松本の競技者としての確かな深化を示している。
解説――実業団・学生対抗陸上競技大会について
実業団・学生対抗陸上競技大会は、日本の実業団と学生による対抗戦形式の陸上競技大会であり、大会名に「秩父宮賜杯」が付く。「オールスターナイト陸上」の別名でも広く親しまれている。その源流は1955年(昭和30年)に神奈川県小田原市の城山陸上競技場で開催された「一般学生対抗陸上競技大会」にまで遡る。その後1961年(昭和36年)に秩父宮家から賜杯が下賜され、現在の「実業団・学生対抗陸上競技大会」として、第1回大会が同じく城山陸上競技場で開催された。
神奈川県平塚市のShonan BMWスタジアム平塚(平塚競技場)を会場としてナイターで開催されており、総合優勝チームには秩父宮賜杯が贈られる。競技種目は男女各10種目に加え、男女混合4×400mリレーが実施される。入場無料で開催されることもあり、夏夜のナイター陸上として地域の観客にも広く親しまれている。
日本グランプリシリーズの一戦としても位置づけられており、実業団のトップ選手と大学生の実力者が同じトラックで競い合うという形式が大会の大きな特徴であり、世代を超えた競演が観客を惹きつける魅力となっている。
解説――Shonan BMWスタジアム平塚(平塚競技場)について
Shonan BMWスタジアム平塚は、神奈川県平塚市の平塚市総合公園内にある陸上競技場であり、正式名称を「平塚競技場」という。横浜市港北区に本拠を置くモトーレン東洋が命名権を取得し、2012年3月から「Shonan BMWスタジアム平塚」の呼称を用いている。収容人数は15,100人。
※平塚競技場は、ネーミングライツ契約をレモンガス株式会社と締結し、愛称が2021年2月1日から「レモンガススタジアム平塚」となった。
1987年に平塚競技場としてオープンし、陸上競技場としては日本陸上競技連盟の第2種公認を受けている。Jリーグの湘南ベルマーレのホームスタジアムでもあり、サッカーの国際試合も開催されている。
陸上競技においては、実業団・学生対抗陸上競技大会(オールスターナイト陸上)の会場として長年にわたり定着しており、夏のナイター陸上の舞台として選手・観客ともに親しまれている。
参考資料
日本陸上競技連盟 公式サイト「第59回実業団・学生対抗陸上競技大会」大会情報
日本陸上競技連盟 公式サイト「「第59回実業団・学生対抗陸上競技大会」リザルト
東邦銀行陸上競技部 公式サイト 「大会日程・結果」選手コメント
日本陸上競技連盟 公式サイト「第59回実業団・学生対抗陸上競技大会」大会要項
日本陸上競技連盟 公式サイト「第65回実業団・学生対抗陸上競技大会」大会情報


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